春場所 千秋楽後

白鵬

新型コロナウイルスの影響で異例の無観客開催となった大相撲春場所千秋楽(22日、大阪府立体育会館)、横綱白鵬(35=宮城野)が横綱鶴竜(34=陸奥)との相星決戦を制し13勝2敗で、2場所ぶり44度目の優勝を果たした。
横綱同士の千秋楽結びの一番は力のこもった好勝負に。
白鵬が四つ相撲に持ち込み、最後は万全の体勢で寄り切った。
大横綱健在を見せつけたが、館内は静寂に包まれたまま。
取組後の館内インタビューもなく、NHK中継内で「落ち着いてよく動けたと思う。(無観客開催は)モチベーションをどう持っていくのか浮き沈みが激しかったのが一番。自分だけではなく、みんなそういう思いだったと思う。ホッとしています」と安堵の表情だった。
異例ずくめの場所を35歳で制し「このような場所を経験したってことは、これからの相撲人生に生かしていきたい」とかみ締めるように話した。
また、全取組終了後に幕内力士と親方衆が土俵脇に集合し、日本相撲協会の八角理事長(56=元横綱北勝海)があいさつ。
時折、言葉を詰まらせながら、まずは相撲ファンからの応援、関係者の尽力に感謝の意を伝えると、こう続けた。
「この3月場所を開催するにあたっては一つの信念がありましました。万来、相撲は世の中の平安を祈願するために行われてまいりました。力士の体は健康な体の象徴とされ四股を踏み、相撲を取る。その所作は、およそ1500年前から先人によって脈々と受け継がれてまいりました。今場所は過酷な状況下の中、皆さまのご声援を心で感じながら立派に土俵を勤め上げてくれました全力士、そして、全協会員を誇りに思います。われわれはこれからも伝統文化を継承し、100年先も愛される国技、大相撲を目指してまいります」
無事に15日間を完走し、八角理事長の表情にも安堵した様子が見て取れた。

貴景勝

一人大関の貴景勝は完敗で負け越しが決まった。
差された左を切ったものの、そのまま押し込まれて膝から崩れた。
「まわしを引かれちゃったんで。それが全てかな」。
荒い息で力なく話した。
昨年は千秋楽に10勝目を挙げて大関の座をつかんだ地元場所だが、左膝に不安を抱える今場所は平幕に5敗するなど不振。
横綱白鵬戦が組まれない屈辱を味わい、最後も大関とりの懸かる朝乃山に意地を見せられなかった。
皆勤で負け越したのは、小結時代の2018年初場所以来だ。
かど番となる来場所へ「一生懸命、力を付けたい」と雪辱を誓った。

朝乃山

大相撲春場所千秋楽(22日、大阪府立体育会館)、大関貴景勝(23=千賀ノ浦)を押し倒しで下し、11勝目を挙げた関脇朝乃山(26=高砂)の大関昇進が確実となった。
日本相撲協会審判部長代理の境川親方(57=元小結両国)が昇進を決める臨時理事会の招集を八角理事長(56=元横綱北勝海)に要請。
同理事長はこれを受諾し、臨時理事会の行われる25日には「大関朝乃山」が誕生する。
大関昇進の目安は三役の地位で直近3場所合計33勝とされるが、朝乃山は合計32勝。
13日目(20日)の横綱白鵬(35=宮城野)戦、14日目(21日)の横綱鶴竜(34=陸奥)戦と連敗を喫した。
だが、安定した取り口に親方衆の評価は高く、境川親方も「力は十分についている。初日から内容も充実している。誰に対しても真っ向勝負をしているのも魅力。好感が持てる」と絶賛した。
朝乃山はどんな時でも真っ向勝負をする。
小学4年から相撲を始めてから、立ち合いで変化をしたことがないという。
「立ち合い変化で勝ってもそれは勝ちじゃない。自分の相撲じゃない。自分を否定することになる」。
どんな相手でも仕切りの時には先に手をつき、全力で真っすぐ当たるのを身上にする。
報道陣にもそうだ。
朝稽古後、報道陣の囲み取材に応じると、どんな質問にもかわさずに素直に答える。
20分ほどに及ぶこともしばしば。
「もう他にありませんか」と気を使って聞いてくるほどだ。

御嶽海

大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)千秋楽の22日、上松町出身で西前頭3枚目の御嶽海(出羽海部屋)は、西前頭5枚目・阿武咲(阿武松部屋)に押し出しで敗れた。自身初の2場所連続負け越しから再起をかけた場所を10勝5敗で終えた。最終盤の連敗で星を伸ばせなかったものの、来場所での3場所ぶりの三役復帰の可能性がある。  今場所は前に出る相撲を前面に初日から6連勝を飾った。2横綱に歯が立たずに連敗を喫するも引きずらず、2度目の優勝を飾った昨年秋場所以来の勝ち越しを10日目に決め、13日目には3場所ぶりの二桁勝利となる10勝に到達、終盤まで優勝争いに食い込んだ。木曽相撲連盟顧問の三村喜一郎さん(88)は「前半は体勢も低く、しっかりと腰を下ろした基本通りの相撲だった」と評価した。  一方で、後半は立ち合い負けする場面が増え、千秋楽の取組も阿武咲の重心の低い立ち合いに下から押し上げられての完敗だった。三村さんは「後半、立ち腰で突き起こされる場面が増えたのが残念」と悔しがった。  御嶽海が小学生の頃から指導をしてきた三村さんは「自分の相撲を取りきれば白星が付いてくることは今場所の前半戦で証明済み」とし、来場所に向けて「『しこ、すり足、一丁押し』の基本的な稽古を積んで精進を」とエールを送った。  夏場所(5月10日初日、東京・両国国技館)の番付は4月27日に発表される。

阿武咲

大相撲春場所の三賞選考委員会が開かれ、殊勲賞は西前頭5枚目・阿武咲(23)=阿武松=が初受賞した。
10日目、横綱白鵬に今場所初めて土をつけたことが評価された。
敢闘賞は東前頭9枚目・隆の勝(25)=千賀ノ浦。
14日目までに自己最多の11勝を挙げ、初めて三賞を獲得した。
技能賞は、終盤まで先頭に立っていた西前頭13枚目・碧山(33)=春日野=が初めて受賞した。

錦木

大相撲春場所千秋楽(22日・エディオンアリーナ大阪)盛岡市出身で西前頭14枚目の錦木(伊勢ノ海部屋、盛岡・米内中)は、東10枚目の佐田の海をつり出しで下し、6勝9敗で春場所を終えた。
錦木はもろ差しで両まわしを引いた。強引に出てきた佐田の海に対し、体を入れ替え、つって土俵外に出した。

琴ノ若

大阪市内で21日に行われた大相撲春場所14日目で、本県ゆかりの琴ノ若(本名鎌谷将且)が、父の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若・尾花沢市出身)が果たせなかった新入幕での勝ち越しを決めた。
4連敗の悪い流れを断ち切った22歳に対し、県内の祖父母や支援者は「ほっとした」「度胸の良さを感じた」などと祝福の言葉を贈った。
東前頭18枚目で新入幕を果たし、初日は白星でスタート。
その後、7勝目からの4連敗という試練を乗り越えた。
188センチ、173キロと体格に恵まれた逸材が、母方の祖父・元横綱琴桜(故人)、そして師匠がともに負け越した新入幕時の成績を上回った。
佐渡ケ嶽親方の両親で、尾花沢市に住む琴ノ若の祖父母は喜びの声を上げた。
「連敗して心配していたが今回は調子が良かった。息子が新入幕した時と同じように見守っていた」と興奮冷めやらない様子。
「気持ちが優しいから後半負けが続くとかわいそうだった。毎日見て応援していたので、勝ち越してくれてほっとした」。
佐渡ケ嶽部屋の後援会長で、食品スーパー「おーばん」などを展開するおーばんホールディングス(天童市)の二藤部洋社長(70)は激励のため大阪入りした。
宿泊先のテレビで観戦し「まずはほっとした。連敗はしたが、じたばたしない度胸の良さを感じた」と成長を感じた様子だ。
勝ち越しを決めた取組後、親方と琴ノ若から「心配を掛けたが、なんとか勝ち越せた」と報告があったといい、「22日も取組はあるし、来場所が控えている。一歩ずつ力をつけていってほしい」とエールを送った。

若隆景

大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)は22日、千秋楽を迎え、西十両2枚目の若隆景(福島市出身)が立ち合いから前に出る姿勢を貫いて、旭大星を押し倒しで下して10勝目を挙げた。
今場所は順調に勝ちを重ねて白星を2桁に乗せ、幕内返り咲きに大きく前進した。
昨年11月の九州場所で本県出身として6年ぶりに幕内力士になった。
スピードと力強い突き押しで初日から4連勝を挙げたが、右足首の負傷で途中休場した。
休場の影響で今年1月の初場所は十両に転落したが、9勝で勝ち越していた。
5月場所の番付は4月27日に発表される予定。

宇良

2度の右膝手術を乗り越え、幕内復帰を目指す関学大出身の宇良が三段目で優勝。
7戦全勝で並んだ南海力との優勝決定戦を制した。
かつて自身の付け人だった兄弟子との木瀬部屋勢対決。
「お互いの出方が分かっている」と慎重な差し手争いから、先に攻めてはたき込んだ。
「久しぶりに大阪で(相撲を)取れて優勝できて良かった」。
2度の長期離脱で地元場所は3年ぶり。
感慨はひとしおだった。
小柄ながら多彩な技を持つ人気力士。
最高位は前頭4枚目で金星も挙げた。
だが、3年前に右膝を負傷して大きく番付を下げた。
復帰後も古傷を痛め、再び序二段まで陥落。
「長いです。時間がかかるなと」との言葉に実感がこもる。
今も膝は万全とは言えない。
得意の居反りなどの無理な体勢はけがにもつながりかねず「きれいな相撲を取りたい」と宇良。
幕下復帰が濃厚な来場所も正攻法で挑む。
宇良(うら=本名宇良和輝)西30枚目、大阪府寝屋川市出身、木瀬部屋。関学大から15年春場所初土俵。
16年夏場所新十両。
17年春場所新入幕。
右膝負傷による2度の長期休場で序二段まで転落した。
得意は押し、足取り。175センチ、134キロ。27歳。

芝田山広報部長

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、史上初の無観客開催となった春場所が幕を閉じた。
発熱による休場者は平幕の千代丸ら3人出たが感染者は出ず、土俵周りでも大きなトラブルはなかった。
「無観客開催運営プロジェクトチーム」のリーダーを務めた芝田山広報部長(元横綱大乃国)は、「他のスポーツ界にも勇気を持ってもらえると思う」と胸を張った。
同チームは、広報部の高崎親方(元前頭金開山)が発案。
場所中に毎日、広報部や審判部、行司や呼び出しなど、各担当部署の代表者ら約25人が集まった。
前日の反省や今後の対応についてなど、約1時間の会議が連日行われ、会議内容や決定事項などは代表者が担当部署や所属部屋に伝達。
芝田山広報部長は「どんなささいなことも話し合い、みなさんに情報が回るように徹底した」と話した。
感染者を出さないための努力も当然あった。
会場入りする親方衆の専用入り口を作ったり、世話人が会場内に明け荷を運ぶ際の動線も場所前に何度もシミュレーションした。
力士らが行き帰りで使用するタクシーの待機場所や方向にもこだわるなど、密集による接触や混乱を回避するあらゆる方法を考え抜いた。
芝田山広報部長は「無の境地でやった。プロジェクトチームだけではなく全協会員が一丸となった結果」と15日間を振り返った。
スポーツイベントの中止や延期が国内外で相次ぐ中、15日間やり切ったことには大きな意味がある。

八角理事長

八角理事長が土俵の上で感極まった。
十両後半が恒例となっている千秋楽の協会あいさつは、表彰式前に全幕内力士を土俵下に整列させて行う異例の形。
「千秋楽にあたり、謹んでごあいさつ申し上げます。本日…」。
万感の思いが込み上げてきた。
目が潤む。
10秒の沈黙後「千秋楽を迎えることができましたことは…」と感謝の言葉を続けた。
毎年、あふれんばかりの人でにぎわうエディオンアリーナ大阪の正面玄関は15日間、固く閉ざされたままだった。
力士のしこ名が書かれたのぼりもなかった。
朝、就寝前と一日2度の検温を義務付けられた力士は公共交通機関を使用せず、タクシーなどで裏口から入館。
土俵上の力士の吐く息、ぶつかり合う音、うなり声が静けさの中に響く異例の場所だった。
「この3月場所を開催するにあたっては、一つの信念がありました。元来、相撲は世の中の平安を祈願するために行われて参りました。力士の体は健康な体の象徴とされ、四股を踏み、相撲を取る、その所作はおよそ1500年前から先人によって脈々と受け継がれて参りました」
協会員の全員が徹底したコロナウイルス感染予防に努め、不要不急の外出を避け、体調維持ができたために休場者も少なかった。
37度5分以上の熱が2日続けば休場、1人でも感染者が出た場合は中止。
極限状態の中でも親方衆、約650人の力士、行司、床山、呼び出しらから1人も感染者を出すことなく終えたことは、何かに守られている感じすらあった。
「今場所は過酷な状況下の中、みなさまのご声援を心で感じながら立派に土俵をつとめ上げてくれました。全力士、そして全協会員を誇りに思います。われわれは、これからも伝統文化を継承し、100年先も愛される国技大相撲を目指して参ります」
神事である大相撲の規律、目に見えない力を世界に知らしめた、歴史に残る場所となった。

神送りの儀式

史上初の無観客開催となった大相撲春場所は22日、千秋楽を迎え、NHK総合テレビが全取り組み後に催された出世力士手打ち式と神送りの儀式を異例の完全生中継した。
通常であれば、午後6時に終了する放送時間に間に合わないことがほとんどだが、白鵬の44回目の優勝が決まった結びの一番や表彰式が早く終わったことから儀式のもようを最後までカバーすることができた。
神送りの儀式では御幣を携えた行司が土俵の真ん中で力士から胴上げされるなど物珍しさが評判を呼び、ツイッターでも「表彰式がコンパクトだったので、出世力士手打式と神送りの儀式が見れたのは貴重でした」「これは激レアだね」「普段見られない神送りの儀式とかも感動したよ」と上々の反応があった。
行司の胴上げは土俵に降りてきた神様を天に送り返すために行う。

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