春場所 千秋楽

白鵬-鶴竜

大相撲春場所14日目は21日、エディオンアリーナ大阪で行われ、横綱・白鵬は平幕・碧山を上手投げで、横綱・鶴竜は関脇・朝乃山を下手投げでそれぞれ降し、ともに2敗を守った。
両横綱は22日の千秋楽で優勝を懸けて直接対決する。
横綱同士の千秋楽相星決戦は2013年九州場所で日馬富士が白鵬を寄り切った一番以来。
鶴竜「ここまで来たらやるだけ」
勝ちっぷりに両横綱の意地が詰まっていた。
白鵬と鶴竜は碧山と朝乃山の優勝の芽を摘み取り、千秋楽での横綱相星決戦に持ち込んだ。
先に土俵に上がったのは白鵬。
2敗同士の対決で、突き押しの強い碧山をつかまえることはできなかったが、前に出てくる相手の勢いを利用した。
左からいなしてバランスを崩させ、上手をつかんで倒れ込みながらの投げで転がした。
一方の鶴竜は冷静だった。
大関昇進を狙う朝乃山に攻め込まれたが、無理な投げを打って敗れた2019年秋場所の反省を生かし、左を巻き替えて双差しになって備え、土俵際で投げの打ち合い。
朝乃山に軍配が上がったが、「自分でしっかり(相手の肘がついたのが)見えていたので大丈夫」と勝利を確信。
物言いの末に行司差し違えで勝った。
白鵬は報道陣の問いかけに無言でミックスゾーンを通過したが、鶴竜は「ここまで来たらやるだけ」と言葉に力を込めた。
横綱の千秋楽相星決戦は13年九州場所の日馬富士―白鵬以来。
史上初の無観客で開催された今場所は、最後に東西の番付最高位の両雄で賜杯を争うことになった。

朝乃山

朝乃山は鶴竜を攻め込み、土俵際で投げの打ち合い。
軍配をもらったが、わずかに左肘が先に落ちており、物言いが付いて行司差し違えに。
「悔いはないんで。しっかり受け止めて」と自分を納得させるように話した。
横綱戦連敗。
大関昇進の目安とされる直前3場所で33勝には届かなくなった。
本人は「出直しです」と繰り返して「見送り」を覚悟していたが、境川審判部長代理(元小結両国)は迷っている様子。「力は十分についていると思う。内容は充実している」と評価しつつ「きのう、きょうのどっちか勝ちたかった。数字というのもね」と続け、千秋楽の貴景勝戦を踏まえて判断することになりそうだ。

正代

正代が三役で初めて勝ち越した。
宝富士にもろ差しを果たすと、休まず前に出て寄り切り。
19場所ぶりに復帰した関脇で区切りの白星を手にし、「まだふわふわしている感じ」と余韻に浸った。
新関脇だった場所では、上位の雰囲気に気後れしたという。
無観客開催の今場所は「お客さんがいなかったので、自分の相撲に専念できた気がする」とも。
地道に前進してきただけに、本来の実力を満員の館内でも発揮できるよう、自信につなげたいところだ。

御嶽海

大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)14日目の21日、上松町出身で西前頭3枚目の御嶽海(出羽海部屋)は、共に3敗を守る東前頭9枚目の隆の勝(千賀ノ浦部屋)と初めて顔を合わせ、押し出しで敗れた。
10勝4敗となり、優勝の可能性がなくなった。
立ち合いで先手を取られた。
相手の右を差そうとしたものの、おっつけられまわしが取れず、土俵際で踏ん張り相手をはたき込んだが、相手の強い押しで先に土俵を割った。
千秋楽となる22日は西前頭5枚目の阿武咲(阿武松部屋)と対戦する。
幕内での対戦成績は3勝1敗。
直近では、平成30年の初場所で御嶽海が突き落としで勝っている。

琴ノ若

琴ノ若は「素直にうれしいですけど、まだあしたがあるので」と表情を崩さずに喜びを表した。
4日間足踏みした後の勝ち越し。
父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から「初日のつもりでいけ」と言われ、吹っ切れたという。
祖父の先代師匠(元横綱琴桜)も父もできなかった新入幕勝ち越しだが、「十両(通過)は自分の方が遅いので」と控えめ。
琴奨菊ら部屋の関取衆や付け人に「少し恩返しができたかな」と感謝していた。

錦富士

大相撲春場所は20日、大阪市のエディオンアリーナ大阪で13日目を行い、東幕下49枚目の錦富士(23)=青森県十和田市出身=が旭蒼天(中川部屋、西22枚目)を送り出して7勝全勝とし、初の幕下優勝を決めた。
本名・小笠原隆聖。
十和田市立三本木小、十和田中、青森県立三本木農高を経て近大に進んだが中退し、2016年に角界入り。
同年秋場所が初土俵で、同九州場所の序ノ口、17年初場所の序二段でそれぞれ全勝優勝した。
17年九州場所に幕下へ昇進し、順調に番付を上げたが、19年秋場所で古傷の左肘を痛め、九州場所を休場して西幕下58枚目まで番付を落とした。
再起を懸けた今年初場所で4勝3敗と勝ち越し、今場所に臨んだ。
錦富士は「5連勝したあたりから安治川親方(元関脇安美錦)や翠富士関から『優勝を目指せ』と言われ、一つ一つを積み上げた。
けがをしないような強い体をつくり、師匠(伊勢ケ浜親方=元横綱旭富士)や安治川親方に恩返しがしたい」と語った。

雄亀湖

大相撲春場所で、東序二段27枚目の雄亀湖(神戸市北区出身)が、7番相撲で勝ち越しを決めた。
立ち合いで上手を取らせず、相手の押し込みを吸収。
素早く左に回って寄り切った。
「うまく腰を使えた。(3勝4敗と4勝3敗では)全然違う」と笑みがあふれた。
これでご当所は3年連続で勝ち越し、「験のいい場所」と喜ぶ。
山響部屋に入って3年。
課題のあがり症を克服し、徐々に稽古場の力を出せるようになってきた。
神戸市立桜の宮小から姫路市立飾磨東中に進み、団体戦メンバーとして全国中学校体育大会に出場した。
個人戦3位に入った同級生のエースが、拓大紅陵高(千葉)を経て今春角界入りした立浪部屋の渉利(たつの市出身)だ。
「僕も稽古を積んできた。(番付を)抜かれたくない」。
まずは先場所まで2場所経験した三段目復帰を目指す。

伊之助

大相撲春場所14日目の21日、立行司の第41代式守伊之助が結びの一番の鶴竜―朝乃山で軍配差し違えをして打ち出し後に八角理事長(元横綱北勝海)に口頭で進退伺を申し出た。
理事長からは「(際どい勝負で)軍配を上げるのは難しかっただろうけど、今後注意するように」と反省を促された。
土俵際の投げの打ち合いで朝乃山に軍配を上げた。
物言いの末に、朝乃山の左肘が先に落ちたとして覆った。
式守伊之助の差し違えは昨年初場所の立行司昇格後で、4場所連続4度目。

千秋楽見どころ

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて観客を入れずに行われてきた異例の大相撲春場所は、22日、千秋楽を迎え、2敗で並ぶ白鵬と鶴竜の両横綱が結びの一番で対戦します。
白鵬が勝てば44回目、鶴竜が勝てば7回目の優勝が決まります。
今場所35歳になった白鵬は下位に2敗するなど調子の波はありましたが、立ち合いから一気に前に出る厳しい相撲はほかの力士を圧倒していて、第一人者の力が健在であることを示しました。
一方、3場所連続で休場していた鶴竜は前半戦、流れに乗れていませんでしたが、日を追うごとに立ち合いの集中力が増し、後半戦は万全の相撲を続けています。
観客のいない土俵で横綱の務めを果たしてきた2人による熱戦が期待され、白鵬が勝てば2場所ぶり44回目、鶴竜が勝てば4場所ぶり7回目の優勝が決まります。
一方、大関昇進を目指す関脇朝乃山は、ここにきて両横綱に連敗し、10勝4敗で千秋楽を迎え、7勝7敗の大関貴景勝と対戦します。
朝乃山が大関に昇進するためには、白星と相撲内容も求められそうです。
昇進を引き寄せるためにも得意の右四つの形で真っ向勝負し万全の相撲を見せたいところです。
勝ち越しがかかる貴景勝は、先輩大関としても負けられない一番です。
これからの土俵を担っていく2人だけに、力を出しきった好勝負が期待できそうです。

無観客

新型コロナウイルスの感染拡大による史上初の無観客開催となった大相撲春場所。
「観客の声援がない」なかで、会場となったエディオンアリーナ大阪の館内で記者が取材すると、普段は気がつかないことが、目と耳に入ってきた
無観客開催の春場所がNHK中継されたことで、行司や呼出の美声がテレビ桟敷でも話題になったが、館内で取材していると、土俵入りで横綱が土俵中央に進み、仁王立ちする際に、行司が「しーっ」と発する声に気づかされる。
「静かにしなさい」という意味がある「警蹕(けいひつ)」という所作だ。
弓取式の際には、行司が力士に「白鵬代、将豊龍~」と声を掛けるのが聞こえる。
横綱の代わりに弓を受けるという意味だという。
「物言い」の場面でも、普段は聞こえない土俵上の“協議”の内容が耳に入ってきた。
無観客開催だと、土俵上で話し合う審判の声が3階席の報道陣にも届く。
細かい言葉まではっきりとは聞き取れないが、集まった審判の親方衆がほとんど協議をせず、審判長がビデオ室とのやり取りを他の審判に伝えているだけということがよくわかる。
大相撲も事実上のVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の時代ということのようだ。
中入りでは立行司が翌日の取組を場内に読み上げるが、観客は誰もいないのに4方向に四股名が書かれた紙を見せながら読み上げていく。
この間、中継は実況席を映しているためその様子はテレビでも流れないが、すべて通常通りに行なう方針ということなのだろう。
NHKは今場所、実況席に特別ブースを設けている。
アクリル板があることで、実況・解説の声が力士に聞こえにくくなるようにしている。
記者席で聞き耳を立てても、音らしきものがブースのなかから聞こえてくるものの、その内容まではわからない。
静まりかえった館内に、北の富士氏の“辛口解説”が響き渡り、力士が気にするといったことが起こらないようにしているのかもしれない。
桟敷席に観客が誰もいないので、土俵の周りに陣取る審判部の親方衆の姿にも目がいく。
普段は気がつかないが、錦戸親方(元関脇・水戸泉)や二子山親方(元大関・雅山)がテレビに映らない足元では、あぐらではなく足を伸ばして座っていることや、親方衆が土俵に上がる時のために別の雪駄が用意されていることも見えた。
土俵正面の観客席の右奥には監察委員、左奥には札番の親方が座っている。
無気力相撲を防止する役割を担う監察委員は、通常は会場内の観察室から取組をチェックしている。
それが無観客ということで、客席に座って土俵を見ているわけだ。
おかげで4人の監察委員のうち1人の親方はボードを持って一番終わるごとに何かチェックをしている様子が見える。
他の3人の親方は腕組みをして目を閉じていたりする。
一番一番、無気力相撲かどうかの議論をしているわけではなかった。
静寂のなかだからこそ、聞こえ、見えてくるものがある本場所となった。

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