春場所 13日目

白鵬

白鵬が正代に敗れ、優勝争いのトップから後退した。
過去9勝1敗と圧倒していたが、張り手にこだわり手を振り回しているうちに中に入られ、もろ差しを許して土俵を割った。
よほど悔しかったのか、支度部屋を出る際に報道陣に声を掛けられたものの、今場所初めて無言で通り過ぎた。
右かかとや腰のケガから復帰し、尻上がりに調子を上げているように見えたが、10日目の阿武咲戦に続く黒星。
やはり終盤のスタミナが課題のようだ。

朝乃山

大関獲りの朝乃山が平幕・隆の勝を返り討ちにした。
立ち合いすぐ得意の右差しになって圧力をかけると、横へ逃げる相手が足を滑らせた。
4連勝で10勝目を挙げ4場所連続となる2桁勝利を決めた。
「自然に右が入った。あとは少し圧力をかけながら逃げたところをつかまえようとしたが、運良く(相手が)こけた。つかまえきれなかったのは反省点」と振り返った。
2敗対決を制して優勝争いに踏みとどまり、13日目は白鵬との大勝負を迎える。
大関昇進の目安「三役3場所計33勝」まで残り2勝となったが、「一日一番。切り替えて自分の相撲を取り切る。立ち合いから当たって前に前に出るだけ。それで負けたら仕方ない」と気合を入れ直した。

正代

関脇・正代が17年春場所以来3年ぶりに白鵬を破った。
「よく我慢できて、攻め時までしのぐことができた」と粘って大横綱から2勝目。
無観客開催だが「応援の声がなかったのでいつも通りにできた。応援が多いと浮足立つ。冷静にいられたのかな」と正代にはプラスに作用した。
大きな勝利で五分の星に戻し、三役在位3場所目で初めての勝ち越しに望みをつないだ。

御嶽海

上松町出身で西前頭3枚目の御嶽海(出羽海部屋)は、西前頭13枚目の碧山(春日野部屋)に押し出しで敗れ、9勝3敗となった。
優勝争いから一歩後退し、昨年9月の秋場所以来となる2桁勝利はお預けとなった。
優勝争いトップを走る相手に、番付上位の力を見せつけることはできなかった。
立ち合いでわずかに当たり負けて上体を起こされ、一気に土俵際に追い込まれた。
いったん右に逃げたが、喉輪と突っ張りで休まず攻められ、形勢を逆転できなかった。
13日目の20日は、東前頭7枚目の宝富士(伊勢ケ濱部屋)と当たる。
対戦成績は御嶽海の4勝2敗。
初顔で黒星を喫して以来4連勝していたが、直近の対戦となった昨年11月の九州場所は6日目に寄り切りで敗れた。

碧山

平幕の碧山が御嶽海を押し出し、1敗キープで自身初の単独トップに立った。
先場所の徳勝龍に続いて平幕優勝のチャンスが巡ってきた。
横綱・白鵬は関脇・正代に寄り切られ2敗に後退。
両横綱と関脇・朝乃山が1差の2敗グループで追い、無観客場所は残り3日となった。
鋭い眼光そのままに獲物を追い詰めた。
碧山は御嶽海のいなしにも全く体勢を崩されることなく、前に出て押し出した。
1差追走の相手に完勝し、1敗を守った。
「当たって前に出ることしか考えていなかった。相手とはよく稽古しているので、稽古場を思い出して(相撲を取った)」。
幕内対戦成績は3勝4敗でも連合稽古などでは「100番やったら95回ぐらい勝っている」と“上から目線”でいった。
本場所でも平常心で戦った結果だった。
白鵬が2敗目を喫したため、自身初の単独トップに立った。
会場を後にした時点では横綱の取組は終わっていなかったが「一日一番」とだけ話し、優勝争いは考えないスタンスを強調した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出できない分、夜は妻・ビオレタさんと電話で話すのが気分転換。
寝不足にならないように長電話はセーブしていると言いつつ「いつもは1時間30分ぐらい。2時間近く話していることも」。
これが力の源になっている。
一人で寂しい思いをさせている気掛かりはあるが、昨年の春場所後に飼い始めたトイプードルの「モリー」のおかげで心配は半減したという。
初場所の徳勝龍に続く平幕優勝の可能性が出てきたことで、錦戸審判部副部長(元関脇・水戸泉)は「単独(トップ)ですから。(今後の取組について)明日話し合いたい」と、横綱との対戦にも含みを持たせた。
無観客開催となった異例の場所の優勝争いが、がぜん面白くなってきた。

千代丸

左下腿蜂窩織炎のため8日目から3日間休場した西前頭15枚目の千代丸(九重)が、元大関で西前頭9枚目の栃ノ心(春日野)を突き落としで破り、再出場後の初白星を挙げた。
左ふくらはぎにサポーターをつけて土俵に上がる千代丸が6勝目で、勝ち越しまで残り3日で2勝と望みをつなげた。
立ち合い両手で突くと、まわしを狙い前のめりになる栃ノ心を左にうまく回り込んで突き落とした。
13日目は西前頭10枚目の栃煌山(春日野)との対戦が組まれている。
新型コロナウイルスの影響で初の無観客開催となった大相撲春場所(大阪府立体育会館)は終盤戦に入っても異様なムードが続いている。
日本相撲協会は力士ら協会員に一人でも感染者が出た場合は打ち切る方針を示す中、幕内千代丸(28=九重)が高熱の症状で8日目(15日)から休場。
ウイルス検査で陰性だったため、11日目(18日)から再出場した。
今回の復帰にあたり、千代丸は相撲協会に「左下腿蜂窩織炎」の診断書を提出。
本来は休場に必要な診断書を出場するために提出するという珍事態となった。
左ふくらはぎにサポーターを装着して臨んだ取組では、幕内琴奨菊(36=佐渡ヶ嶽)に一方的に寄り切られて完敗を喫した。
ミックスゾーンでは報道陣からの問いかけに足を止めず、無言で会場を後にした。
普段なら相撲に負けた日でも気さくに取材に応じていた男が、まさかの“スルー”で独特の緊張感を漂わせた。
10日目(17日)に「(千代丸に)インタビューしてあげてください」と話していた幕内千代大龍(31=九重)も一転して沈黙。
千代丸の復帰は明るいニュースのはずだが、なぜか部屋全体がピリピリした空気を漂わせている。

長浜

これぞ電車道-。
西序二段49枚目の琴長浜(神戸市須磨区出身)は立ち合いから相手に時間を与えず、一気の押し出しで2勝目を挙げた。
中卒4年目の18歳。
父学さんが踏めなかった土俵に上がっている。
市川高OBの学さんは高卒で角界入りを目指したが、体調不良で断念。
その話を聞き「それなら自分がやってみようと。プロの世界で上に行けば恩返しになる」と入門した。
この日の白星も、親子の対話がきっかけ。
連敗中、大阪府内の宿舎を訪れた学さんに「立ち合いが遅い」「手だけが前に出ている」と指摘され、踏み込みの鋭さと手足の連動性を意識した結果、圧勝につなげた。
今場所は既に4敗を喫し、負け越しが決まっているが「落ちる番付を最小限に抑えるためにも3番勝つ」。
自身の千秋楽となる残り1番を連勝で締めくくる。

大相撲春場所

新型コロナウイルス感染拡大の影響で無観客開催となった春場所は、感染予防のため力士に外出禁令が出されるなど厳戒態勢が敷かれている。
気分転換もままならない本場所の終盤戦。
日頃感じることのないフラストレーションを、取材の現場で“発散”する関取がいる。
36歳のベテラン・松鳳山(二所ノ関)は、10敗目を喫したこの日の取組後、「負けても呼んで下さい。ストレスたまってるから、しゃべりたいんです」と、報道陣に異例のお願いをした。
今場所は特別に、支度部屋の外に設けられたミックスゾーン。
報道陣との距離は2メートルほどに保たれ、負ければ素通りする力士もいる中、ここが“憩いの場”となっているようだ。
松鳳山といえば、勝っても負けても取材に応じる姿勢は変わらない。
負けた後でも淡々と、時には明るく報道陣の質問に答える。
この日も敗戦の後だったが、聞かれたことには真摯に対応。
「勝っても負けても話しをする。それがプロ」と、いつか聞いたことがある。
松鳳山によると、「出かけられないから、気分転換もできない」という今場所は、いつもより早く毎日が過ぎる感覚だという。
就寝までの時間は、スマートフォンで動画を見たり、ゲームをして過ごすそうだが、それも飽きてくる頃…。
発散する場所もないようで「また呼んで下さい。しゃべりたくてしょうがないので」。
取材の場が白星への一助となれば、これ幸いである。

携帯持ち込み解禁

通常、支度部屋には記者が自由に出入りする。
十両の取組が始まる頃には東西の支度部屋で記者が何人も待機するが、今場所は立ち入り禁止だ。
「メディアが支度部屋に入ると“監視役”の役割も果たす。2011年に発覚した八百長では、支度部屋が舞台のひとつとなった。東西の支度部屋を行き来する幕下力士が仲介役となり、携帯メールで星がやり取りされた。それ以降、支度部屋は携帯持ち込み禁止だが、今場所は緊急連絡用に許可されている。
急な体調不良への対応のためかもしれないが、それなら(無気力相撲をチェックする)監察委員の親方衆を観客席だけでなく、支度部屋に配す策などが必要ではないか」
様々なところで“監視の目”がなくなるなか、大関昇進がかかるのが関脇・朝乃山だ。
今場所は貴景勝が一人大関のため、西の横綱・鶴竜が番付表で「横綱大関」となる異常事態が生じ、新大関誕生が熱望されている。
「昨年11月の九州場所が11勝、初場所が10勝なので、『3場所33勝』の昇進ラインまでは、本来12勝が必要。ところが、土俵以外に注目が集まるなか、“10勝でも昇進”という声が出てきた。実際、初目に向正面の解説だった舞の海が“10勝ライン”に言及した」
緊張と思惑が交差するなか、春場所は続く。
「場所前の理事会では、中止の場合に力士の成績をどう扱うかの議論もあった。たとえば、11日目から中止になり、その時点で朝乃山が10勝0敗だったら昇進させるのか、という問題。結論が出ないまま開催が決まった」
例年とは違う意味で、“荒れる春場所”の後半戦で何が起きるのか。

八角理事長

2敗目を喫した白鵬は無言で報道陣の前を引き揚げる
横綱白鵬(35=宮城野)の“ご乱心”?を協会上層部は首をかしげた。
過去の対戦成績9勝1敗で、本場所以外では横審総見や出稽古でも「稽古台」のような存在だった関脇正代(28=時津風)相手に、心の変調ぶりを露呈した。
立ち合い、右で張った。ここまでは、よくある白鵬の姿だが、その張り手が決まって押し込んでも、さらに張り続けた。
2発目、3発目が不発に終わり、4発目は何とか当たったがバランスを崩し上体が起き、正代に脇をつかれ二本差しを許した。
なすすべなく寄り切られ2敗目。
優勝争いでトップの座を平幕で1敗キープの碧山(33=春日野)に譲り渡し、横綱鶴竜、関脇朝乃山にも並ばれた。
協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)は「らしくない。興奮して気持ちを抑えられなかったのか。最初から冷静さを欠いて、2発目に空振りしてバランスを崩した」と話した。
さらに「気持ちが整ってなかったのか。どうしちゃったんだろう、勝負を早く決めたかったのかもしれないが、こうゆうの(白鵬の姿)は見たことがない」と心の乱れに驚きを隠せなかった様子だ。13日目は大関とりの朝乃山と対戦するが、この日の相撲の影響について「あるでしょう。ただ(単に)負けたのではなく、自分から墓穴を掘った。気持ちを立て直せるかだろう」と話した。 また土俵下で審判長を務めた審判部の錦戸副部長(元関脇水戸泉)も、変調ぶりを取組前の所作の一端から、垣間見たようだ。
「いつも塩を取りに行く時、サーッと走るのに、今日はちゅうちょしていた」。
さらに立ってからも「張り手の時は、張って差すか、まわしを取るかだけど、今日は張り手しかやってない」と二の矢が出なかった異変を察知。
「今日は少し高かった。いつも脇を締めているのに、振りかぶっていた」と、自滅した横綱の相撲を振り返った。

大相撲取組動画

大相撲をもう一度見たい!そんな方はこちらをクリック☆