春場所 10日目

白鵬

勝ちっ放し。平幕2人が1差で続く展開に「引っ張っていけるよう、千秋楽まで一番一番やっていきたい」と余裕たっぷりに。

貴景勝

貴景勝が早くも4敗目を喫した。
豊山を押し込んだが、右腕をつかまれると攻めが雑になって押し出された。
支度部屋に戻る際にモニターで取り口を確認し、「失敗した」と舌打ちした。
場所前から違和感があったという左膝の状態も気掛かり。
普段は丁寧に取材に応じるが、この日は報道陣の問い掛けに無言だった。

朝乃山

大関を目指す朝乃山が、昨年九州場所から連敗していた正代を退けた。
我慢して右をねじ込んで圧力をかけ、最後は上手に手を掛けて寄り切り、「落ち着いて攻められた」。
得意の右四つになれなかった前日から立て直した。
大関昇進の目安とされる直近3場所計33勝まではあと5勝。
「先のことを考えても仕方ないと思うので、開き直って思い切っていく」。
勝負どころへ弾みがつく7勝目になったはずだ。

徳勝龍

前に出て阿武咲を下し2勝目。
「しっかり最後までやらないと。応援してくれる人がいるから」。先場所優勝力士の自覚。

御嶽海

大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)9日目の16日、上松町出身で西前頭3枚目の御嶽海(出羽海部屋)は、東小結・北勝富士(八角部屋)を一気に押し出し、7勝目を挙げた。
前日の中日8日目は西横綱・鶴竜(陸奥部屋)に押し出しで敗れた。
初日から6連勝の後、2横綱に連敗を喫していた御嶽海は、力強い相撲で3連敗を回避。
流れの悪化を食い止めると共に、3場所ぶりの勝ち越しまであと一番とした。
立ち合いから一気に攻める相撲がよみがえった。
御嶽海は、相手に頭から突っ込まれるも踏み込みが良く、ものともしない。
左喉輪で突き放し、右はずで押し込んで一直線に仕留めた。
前日は低く当たった鶴竜に立ち合い負けだった。
横綱の厳しい攻めに手も足も出なかった2日間の相撲を払しょくする会心の内容だった。
10日目の17日は西小結・遠藤(追手風部屋)と対戦する。
過去7勝5敗と白星が先行し、先場所は、終始攻めた御嶽海が相手得意の左を使わせず、上手出し投げで勝っている。

炎鵬

高校の先輩、遠藤に今回は歯が立たず。
「先場所の良い感覚を信じていたが、相手のペースにはまってしまった。自分のペースで取りたかった」

隆の勝

迷いのない相撲だった。
隆の勝が自己最速9日目で勝ち越し。
玉鷲に押し込まれたものの右を差し、すくって形勢逆転。
すかさず押し込んで実力者を土俵外へ追いやった。
「膝が曲がって下半身で相撲が取れている。先場所より力がついていると思う」と相好を崩す。
一昨年秋場所で新入幕を果たした後、2場所で十両転落。
再入幕まで5場所を要したが、大関貴景勝に胸を借りて地道に力を蓄えた。
今場所前には右を差して押し込むこともあったといい「それが自信になっている」。
この日は大関から無理にでも右を入れた方が良いと助言を受けていた。
そのことを実践して手にした白星でもあった。
異例となった無観客の場所での躍進。
師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は「稽古場で強いタイプ」と評価しながら、「お客さんが入った時も、声援を良い方に捉えてほしい」と期待した。
今年は三役昇進を掲げている。
先に上がった阿炎ら同学年への意識も強い。
目標に近づくためにも「2桁勝てるように頑張りたい」。
残り6日間も貪欲に白星を目指す。

琴奨菊

大関経験者の東前頭13枚目琴奨菊(36=佐渡ケ嶽)が、元横綱武蔵丸(現武蔵川親方)に並ぶ幕内通算706勝目を挙げた。
立ち合いから左を差し込んで、出足に任せた一気の攻めで寄り切り。
「いい立ち合いでしたね。昨日(志摩ノ海戦は)ちょっと窮屈になったけど、しっかりスペースを空けていい立ち合いになった」と納得の表情を浮かべた。
記録をさらに伸ばし「ありがたいこと」と感謝。
「1日一番頑張って、その積み重ねです」と話し、笑みを浮かべた。
好調を維持する佐渡ケ嶽部屋の関取衆に刺激を受ける。
琴恵光が十両で勝ち越し一番乗りを果たし、新入幕で22歳の琴ノ若、20歳の十両琴勝峰が勝ち越しに王手をかけた。
「琴勝峰の力強さ、琴ノ若の柔らかさが欲しい。若さが欲しい」と冗談っぽく笑った。

碧山

碧山が4場所ぶりの勝ち越しを9日目で決めた。
巨漢同士の一番で、千代大龍を立ち合いから圧倒し、「久しぶりの勝ち越しで気持ちが楽になった」とほっとした様子。
先場所は7日目から9連敗するなど4勝11敗。勝ち星を意識し過ぎたという。
今場所は「思い切り当たって稽古場みたいに前に出ればいいと思って」。
無観客となり、稽古場で強い力士が有利とみる声があったが、それを実証する好調ぶりだ。

千代丸

大相撲春場所を高熱のため8日目の15日から休場した西前頭15枚目の千代丸(28)=九重部屋=は16日も熱が下がらず、PCR検査(遺伝子検査)を受けることになった。
日本相撲協会の鏡山危機管理部長(元関脇・多賀竜)によると、15日朝の検温では39・7度で、16日朝に40度に上がったという。
師匠の九重親方(元大関・千代大海)から「熱が続いているので、PCR検査を受けさせる。体は元気。胸のレントゲンも異常なかった。病院では蜂窩織炎の疑いが強いと言われている」と説明があったという。
千代丸は現在、隔離されている。
協会は今場所、各部屋に起床時と就寝前の1日2回、検温するよう通達。
力士は起床時の検温で37・5度以上が2日続くと休場させることにしている。
また、協会員から一人でも感染者が出れば、春場所を中止にする方針を示している。

大相撲春場所

新型コロナウイルスの影響により、史上初の無観客開催となった大相撲春場所。
2日目、立浪部屋の序二段力士が40度の発熱で休場し、関係者はいきなり大騒ぎとなった。
立浪親方(元小結・旭豊)の報告を受けた鏡山危機管理部長(元関脇・多賀竜)は「ホテルに隔離」を指示。
インフルエンザ検査は陰性で翌日は36.7度に下がったという。
「場所前の理事会で『感染者が出た時点で中止』と決まっただけに、各部屋は相当ピリピリしている。
37.5度以上の熱が2日続いたらPCR検査となり、感染者を出した部屋の親方は中止の責任を問われかねないから当然でしょう」
報道陣はシャットアウトの状況で「立浪親方への直接取材もできない」という。
「今場所は発熱など体調不良の場合、診断書なしで休場可能となった。立浪部屋の件も当初は発表がなく、休場した力士についてメディアから協会に問い合わせて初めて、『40度以上の熱』だと発覚しました」
会場のエディオンアリーナ大阪も厳戒態勢だ。
力士はタクシーや自家用車でやってきて、裏口で消毒液を手にかけられて中に入っていく。
本誌記者も2日目に館内に入り取材したが、力士たちとは別の東口の受付では37.5度以上の熱がないか検温がある。
チェックが終わると、「検温済」の下げ札を受け取って中に入り、決められた通路を通って3階の記者用の椅子席へ向かう。
館内はピーンと空気が張り詰め、呼び出しや行司の声だけが響く。
会話どころか、咳払いも憚られる雰囲気のなか、炎鵬(前頭4)が逆転勝ちし、照強(前頭11)が仕切りで大量の塩をまく──普段なら大歓声の場面だが、当然ながら水を打ったような静けさのままだ。
館内の至るところに「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙があり、親方衆とメディアの動線は全く異なる。
「各社、東西の通路に1人の記者を配すだけ。ミックスゾーンで力士と2mの距離を置いての取材になるが、お互いにマスク越しで声がよく聞こえない。これをスルーする遠藤(小結)のような力士もいる。審判部など各部署への取材は代表1社のみ。打ち出し後の理事長談話も電話による代表取材で、その内容が記者クラブに伝えられる。すべてのコメントが同じで、どの社の記事も似てしまう……」

10日目の見どころ

大相撲春場所は10日目。
幕内でただ1人全勝の横綱 白鵬は平幕の阿武咲の挑戦を受けます。
観客を入れずに行われている春場所は休場明けの白鵬がただ1人全勝を守っています。
白鵬は17日、前頭5枚目の阿武咲の挑戦を受けます。
白鵬は過去の2回の対戦でいずれも勝っていて、日に日に状態を上げる中、左の上手を取って自分の形になれば断然優位です。
阿武咲は、まずは鋭く踏み込んで、得意の突き押しで前に出て横綱を慌てさせたいところです。
大関昇進がかかる関脇 朝乃山は2敗を守って、17日は前頭4枚目の炎鵬と対戦します。
朝乃山は先場所の初対戦で敗れていますが、動きの速い相手にまわしを取って力強く前に出ることができれば優位な展開に持ち込めます。
今場所、ここまで3勝6敗と苦しい炎鵬は、まずはつかまらないよう立ち合いで工夫し、動き回って勝機を探りたいところです。
休場明けの横綱 鶴竜は勝ち越しをかけて平幕の竜電と結びの一番で対戦します。
平幕で1敗の2人は、隆の勝が宝富士と、碧山が志摩ノ海と、それぞれ対戦します。

ミックスゾーン

2メートル先に立つ力士の人間性が垣間見える瞬間がある。
春場所の取材は通路を仕切った「ミックスゾーン」と呼ばれる方式。
新型コロナウイルス対策のため、支度部屋でまげを直す間に質問を受ける通常の方式を避け、力士と取材陣の間を柵で隔てて、距離を置いて言葉を交わす。
場所の半ばを過ぎて力士も慣れてきたのか、異例の方式でも人柄を感じる瞬間は多い。
高安はこれまで、支度部屋の取材では負けた後にはほとんど言葉を発しなかった。
険しい表情で悔しさを押し殺すのが常だった。
だが今場所はミックスゾーンで、負けた後も足を止めた。
休場する前の3日目、白鵬に敗れた後、「ちょっと後手になった。横綱のペースでしたね」。珍しい敗戦の弁が悔しさを際立たせた。
支度部屋を出て帰る際に報道陣が声をかけるシステム。
支度部屋での取材は風呂上がりがほとんどだが、ミックスゾーンでは着替えてから報道陣に向かい合う。
服を着ると土俵での高ぶりが薄れ、取組を落ち着いて振り返る余裕が生まれるのかもしれない。
ほとんどの力士は呼び掛けられるまでは素通りしようとする。
だが4日目の琴奨菊は柵の前で自ら足を止め、「(取材はなしで)オーケー?」と確認してから帰路についた。
普段から丁寧に報道陣に答える人柄は方式がどうであれ変わらない。
同日の千代大龍も明るい人柄がそのまま表れていた。
取組で痛めた左足を引きずってゆっくりと歩きながら「もう治りました。見てください。ちゃんと歩いてる」。
心配する報道陣を和ませながらけむに巻き、翌日も立ち合いで強烈な踏み込みを見せた。
一方で呼び掛けに立ち止まらない力士もいる。
普段から質問にほとんど口を開かない記者泣かせの遠藤。
「関取、お願いします」という声にも目線すら向けず悠然と歩き去る。
「土俵の上がすべて」というメッセージなのか。
9日目までコメントはゼロ。
非日常の場所でも普段通りの自分を貫く精神力があるとも言えそうだ。

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