春場所 中日

白鵬

横綱白鵬(35=宮城野)が、平幕の御嶽海との全勝対決を制して単独トップに立った。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、史上初の無観客開催となった今場所。
さらには現役続行の最大のモチベーションになっている東京五輪も通常開催が厳しくなっている中、休場明けながら気を吐いている。
土俵内外で異常事態が起こっている今こそ、横綱の責任を果たす。
綱の重みを見せた。
左で張って出た白鵬は右手で御嶽海の前みつを探りつつ、相手の左腕の動きを封じながら前へ。
何とかしようともがかれたが、構わずに出続けて完勝。
先場所の右かかと負傷による休場明けながら、好調な相手を下して単独トップに立った。
「白星は薬と昔から言われている。一番一番です。今日は7日目が終わったということ」。
負けても座布団は舞わないが、無観客場所でもきっちりと無敗を守った。
4カ月後に迫った祭典が最大のモチベーションだ。
18年に死去した父ムンフバトさんは、レスリング選手として64年の東京五輪に出場。
それだけに「父親と同じ景色を見たい」と青写真を描く。
さらには「オリンピックが終わったら絶対に目標を失うのが見えている」とまで明言。
開会式での横綱土俵入りも夢見るなど、東京五輪に並々ならぬ思いを持ち続けている。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、東京五輪の通常開催が危機的状況に。
さらに今場所は無観客とあって、気持ちを奮い立たせるのが難しい。
それでも「今はやることをやるだけ。やっていくうちにいい流れになってくると思う。世界が喜ぶ大きな大会。今はこういう時期だけどみんなが待っていますから」と自分に言い聞かせるように言った。
横綱としての責任を、これまでも果たしてきた。
野球賭博問題でNHKの大相撲中継がなかった10年名古屋場所や、八百長問題で通常開催できなかった11年技量審査場所、元横綱日馬富士の暴行問題で揺れた17年九州場所など。
異例の場所を優勝で締めてきた。
だからこそ「こういう場所こそ引っ張っていくんだという気持ち」と自覚を持つ。
土俵の上から横綱の威厳を世の中に発信し続ける。

鶴竜

鶴竜は炎鵬を難なく下し連敗を免れた。
身長が18センチ低い相手。
立ち合いで突くと、距離を取って攻め、最後もよく見て押し倒した。
「中に入れないようにした。とにかく油断しないように」
6日目に敗れ早くも2敗目を喫していた。
しかし、「しっかり切り替えていくしかない」と気持ちを入れ直し、嫌な流れを断ち切った。

貴景勝

貴景勝が徳勝龍の挑戦をはね返した。
もろ手で当たって上体を起こすと、タイミングの良い突き落とし。
「しっかり準備していった。あすも変わらず気持ちをつくり直していきたい」と淡々と話した。
先場所は千秋楽で徳勝龍に敗れ、目の前で優勝を決められ、「やっぱり悔しかった」。
冷静な取り口で雪辱を果たした。
これで白星が先行。
「無観客の中でも不動心で臨むことが本当の強さ。感情に流されているようでは駄目」と自分に言い聞かせるように言った。

朝乃山

朝乃山が劣勢からの対応に進境を見せた。
相手は、うまさと柔らかさに手を焼いてきた遠藤。
4場所ぶりに勝ち星を奪い、6日目に土がついたことも引きずらなかった。
「体がよく動いてくれた」と納得の口ぶりだった。
これまでと同じように、もろ差しを許す苦しい展開。
しかし、ここからが違った。
胸を合わせて前進。
しっかり圧力を伝え、その反動を利用するように小手に振って転がした。
「勢いのままいったと思うが、攻めようという気持ちがああなった。気持ちで勝った」と藤島審判長(元大関武双山)。
安易な巻き替えなど、雑な攻めを封印し、「またあしたからいい相撲が取れるのではないか」。
場所後の大関昇進に期待が膨らむ取り口だった。
大願を果たすためにも、地位にふさわしい安定した成績を残すためにも、持ち味の右四つになれない形から立て直すすべの習得が不可欠だろう。
課題克服に向け、確かな一歩を踏み出した。
「先のことは考えないで一日一番頑張りたい」と朝乃山。
気の緩みはない。

大栄翔

豊山を押し出して「終始攻められたのでよかった」と自賛。
3連敗後の4連勝には「ここからしっかりやっていきたい」。

御嶽海

大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)7日目の14日、上松町出身で西前頭3枚目の御嶽海(出羽海部屋)は、東横綱・白鵬(宮城野部屋)に押し出しで敗れた。
結びの一番での無敗対決を落とし、今場所初黒星を喫した。
中日8日目の15日も結びの一番で、西横綱・鶴竜(陸奥部屋)に挑む。
横綱が放った厳しい左の張り差しに、初日から6連勝と好調の御嶽海の出足が止まった。
立ち合い右頬に張り手を受けた御嶽海は、あっけなく左四つを許した。
もろ差しを狙うも左腕を封じられてかなわない。
巻き替えで重心が浮き、左に回り込む動きが相手を呼び込み、残り腰なく一方的に寄り切られた。
勝ちっ放しの白鵬を1敗で御嶽海、朝乃山ら5人が追う。
今場所2敗の鶴竜との対戦成績は御嶽海の6勝7敗で、4度対戦があった昨年は2勝2敗の五分だ。
先場所は御嶽海の不戦勝だった。

炎鵬

横綱初挑戦は鶴竜に完敗。
「自分の弱さを痛感している。横綱と戦う力はまだまだ自分にはない」

隆の勝

6勝目。
「右を差して攻める形が良くなった。大関との稽古で何度か押し込めたのが、自信になっている」と手応え十分。

栃ノ心

静寂に包まれた館内で、取組が行われている。心の持ちようは力士それぞれだ。
小兵の石浦は「あまり周りを見ないようにしている」と花道を通る時や土俵に上がる時に周囲を見渡さない。
いつもなら約7000人はいる観客が0。
目に入るのは審判、呼び出し、行司、出番前の力士ら数人のみ。
「1人1人の顔が印象に残ってしまって気になる」。
さらに「記者の方も…」と、2階席の一部にいる報道陣も気になるという。
無音に敏感になる力士も多い。
三役復帰を目指す栃ノ心は「お客さんがいないと不安になる。本当に静かで逆に緊張する」と静けさが重圧になるという。
一方で「誰も見てないから緊張しない」と魁聖。しかし声援がないからこそ「気合が入りにくい。いい緊張感が出ない」と正直だ。
錦木は「シャッター音が気になる」。
いつもなら声援にかき消されるはずの、報道陣のカメラのシャッター音に戸惑う時があるという。
「時間いっぱいになったらいつも気合が入りすぎて頭が真っ白になる。だからいつもと変わらない」と言うのは、十両上位からの幕内復帰を目指す照ノ富士。
史上初の無観客開催に、それぞれが経験したことのない心理状態で臨んでいる。

琴ノ若

重い魁聖を寄り切って5勝目。
もろ手で突く立ち合いを見せ「自分の距離感で取りたかった。体が動いてくれている」と納得顔。

実力場所

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、無観客ながら開催となった大相撲春場所が今のところ、無事に折り返しを迎えようとしている。
1人でも感染者が出たら場所は打ち切りとなるだけに、力士は1日2回の検温で37度5分が2日続いたら理由を問わず休場、場所の行き帰りは公共交通機関を使わず自家用車やタクシーなどを利用して費用は全額協会持ち、会場入り後の外出は禁止など、厳戒態勢が敷かれている。
史上初の無観客場所では横綱が平幕力士に敗れるようなことが起きても当然、大歓声や拍手はなし。
座布団も飛ばず何とも味気ない。
普段の場所なら勝てば大喝采、負ければ大きなため息が館内にこだまする炎鵬は初日に敗れ「何のために戦っているのか、今日は見つけられなかった。どれだけ声援に力をいただいているのかを感じた」と違和感を覚えずにはいられなかった。
3日目の豊山戦は激しい突っ張り合いの後、近年の相撲では珍しい手四つの体勢となり、互いに相手の出方をうかがう場面も。
本来であれば、ヒートアップした館内のムードが日本人特有の判官びいきとも相まって99キロの小兵を後押しし、相手を“完全アウエー”の空気に飲み込んでいたかもしれない。
「何も閃かなかった」という炎鵬はいいところなく1分を超える熱戦の末、最後は押し倒されてしまった。
大量の塩を撒き、館内を盛り上げて自身の気合いを高める照強も「声援を力に変えようと思っても声援がないから」と序盤は戸惑いを隠せなかった。
土俵上の力士と観客が一体となって醸し出す独特な雰囲気は、時に番狂わせも演出するが今場所はそれがなく取組は淡々と進行していく。
拍手や声援のない相撲はまるで稽古場のようだ。
「あまり緊張しない」という言葉も多くの力士から聞こえてくる。
巡業の稽古などでは10連勝以上することも珍しくない碧山は、初日から6連勝とここ最近にない好調ぶりで「今場所は集中できている。稽古場みたい」と話すのがあたかも象徴的。
以前から稽古場の強さには定評がある男の面目躍如だ。そういう意味では、無観客場所は現状の力量が掛け値なしに如実に現れる場所なのかもしれない。

中日8日目の見どころ

大相撲春場所は、中日8日目です。
初日からただ1人7連勝の横綱 白鵬は阿炎と対戦します。
観客を入れずに行われている春場所は、休場明けの横綱 白鵬が危なげない相撲を続けています。
14日は同じく勝ちっぱなしだった平幕の御嶽海に勝って、ただ1人初日から7連勝と異例の場所を引っ張っています。
白鵬は15日、三役経験のある阿炎との対戦です。
過去の対戦成績は不戦敗を除くと白鵬の2勝1敗で、まわしを引いて胸を合わせる形を作れば白鵬が圧倒的に優位です。
阿炎としては、長い腕を生かした突っ張りで徹底して相手を突き放し、勝機を探りたいところです。
1敗で追う御嶽海は、横綱 鶴竜との対戦です。
過去の対戦成績は、御嶽海が6勝7敗ときっ抗しています。
御嶽海は、今場所、重く鋭い立ち合いから一気に前に出る圧力が抜群で、相手を引かせる展開に持ち込めば十分に勝機があります。
すでに2敗の鶴竜としても難敵を退けて勢いに乗りたいところで、低い姿勢を保って前まわしを引くなど有利な形を作って攻めていく必要があります。
一方、大関昇進を目指す関脇 朝乃山もここまで1敗で、15日は学生時代からのライバル、豊山と対戦します。豊山も重い突き押しで力をつけているだけに、朝乃山としては、立ち合いで当たり負けせず相手に圧力をかけてから得意の四つ相撲に持ち込みたいところです。

序ノ口力士が発熱で休場

大相撲春場所7日目の14日、序ノ口力士1人が発熱のため休場した。
日本相撲協会の鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)によると、13日の昼から夕方にかけて症状が表れ、病院で「胃腸風邪」と診断を受けた。
14日朝も熱が下がらなかったという。

タクシーが力士ら取り合う熱戦

「力士待ち」のタクシーが並ぶ光景が、会場のエディオンアリーナ大阪(大阪市)周辺で連日見られる。
新型コロナウイルスの感染拡大で初めて無観客で行われている大相撲春場所は、土俵外でも異例の事態が起きている。
力士たちの出入り口になる会場の裏口付近は、本来ならファンでにぎわう場所だが、今場所では力士との接触が禁止されているため、人影はまばらだ。
その代わりに空車のタクシーが何台も巡回したり、駐車したり。
混み合うと、警備員が移動を促す一幕もあった。
待機していたタクシーの男性運転手は「お相撲さん待ちです。コロナの影響で外出を控える人が多いが、こっち(会場周辺)は需要があるので」と明かす。
あるタクシー会社は相撲部屋に営業をかけていた。
大相撲の力士は番付によって移動手段が決められており、タクシー利用は「関取」と呼ばれる十両以上だけ。
幕内以上は運転手付きの車が認められ、大関以上は東京・両国国技館では地下駐車場に乗り入れることができる。
幕下以下の力士は電車やバスなどを利用するのだが、日本相撲協会は今場所、コロナウイルスへの感染予防のため、特例で全力士の会場出入りの際の移動手段をタクシーか自家用車に限定した。
通常は幕下以下の力士は公共交通機関の交通費が支払われるが、今場所はタクシー料金も全額を協会が負担する。
力士は約700人おり、関係者も含めて多数がタクシーを利用している。
初日に序ノ口デビューを果たした煌(きらめき)は所属の朝日山部屋の宿舎が奈良県橿原市にあり、「35分くらいかけて来た。(片道で)2万円かかった」と説明する。
車に乗ることに恐縮して「何か変な感じ」と漏らす力士もいる。
もっとも、タクシー会社も通常の場所よりもうかっているわけではない。
観客がいないからだ。
土俵の外ではタクシーが力士らを取り合う戦いが繰り広げられている。

大相撲春場所
大相撲をもう一度見たい!そんな方はこちらをクリック☆