大関は三役の最高位であり、元来は力士の最高位でもあった。横綱とは、実績を積んだ大関に贈られる「敬称」あるいは「名誉職」とでも言うべきもので、今のように地位を示す言葉ではなかった。 まあいい。たとえ大関が三役の最高位だとしても、小結や関脇とは完全に別格だ。その由縁は「連続して3場所三役を務め、その間に34勝以上しなければない」という大関昇進の不文律にある。つまり三役で毎場所11勝したぐらいでは大関になれない。3場所中に1回優勝するくらいでないと届かない地位なのだ。しかも3場所連続の成績が問われるから、たまたま波に乗って、運良く大関になるということはありえない。安定した力を発揮して、初めて到達することができる。 それでも大関にはどこか悲哀が漂う。あともう一歩で最高位という所まで行きながら、志を半ばにして土俵を去るからだ。頂上に立てなかった登山家のように、大関で満足しながら辞めた力士はいないだろう。栄光と悲哀の共存。それだけに大関はことごとくドラマチックであり、その土俵人生や相撲観は好角家を魅了してやまない。 |