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42.観客席の人たち
相撲中継を楽しみながら、見るとは無しに見ているのが観客席。有名人、きれいどころ、民族衣装を着た外国人、相撲より飲み食いに夢中になっている人、勝負が決まるたびに一喜一憂している人…等が目に入ってくる。
正面の観客席や、東西力士だまりの後方にいる観客は、何度も目にすることになる。中には毎日のように、あるいは毎場所のように見かける人もいる。誰でも気がつくのは、金ピカの帽子をかぶって、日の丸の扇を振っているおじさんだろう。オリンピックでは柔道やフィギュアスケートの応援にも駆けつけて、マスコミのインタビューを受けたりしていた。国技館にもよく足を運び、ひいき力士が勝つと立ち上がって拍手喝采を贈っている。
人の和服女性もよく見かける。というかこの2人は、もう何年にもわたって、全ての場所で(つまり東京場所でも地方場所でも関係なく)、毎日のように見かける。1人はややふくよかな感じで、眼光鋭い大きな目が印象的。微笑んだり、誰かと話したりすることもなく、真剣に土俵に注目している。もう1人は色白の細面で、いつも日本髪を結っている。「ああ、あの人か」と思い当たる人もいるだろう。
テレビに映るぐらいだから、かなり前列の席にいる。場所が始まれば、そこに毎日やって来る。よっぽど相撲が好きで、なおかつお金と時間に余裕がある人に違いない。いったい何をしている人だろう?下世話ながら、そんなことを思ってみたりもする。
挿絵と文章は関係ありません
士が入退場する花道のすぐ近くには、これまた毎場所、これまた毎日、杉山邦博氏が陣取っている。かつてはNHKのアナウンサーとして実況もしていた。引退後は相撲に関する本を出版したり、相撲雑誌の対談やエッセイなどでもよく見かける。根っからの相撲ファンと見た。
よく相撲部屋や稽古場を訪問しているのだろう。力士の体調や近況など、足を使って手に入れた情報が豊富にある。相撲の歴史や故事来歴にも明るい。アナウンサー時代は、解説の親方衆よりずっと面白かった。観察眼も鋭く、微妙な勝敗や、判りにくい決まり手に際しても、解説や館内放送より先に言い当てたりもしていた。こんな人が毎日花道の傍らで土俵を凝視しているのだから、力士たちは身の引き締まる思いだろう。
撲記者、すなわち新聞・テレビ・雑誌の相撲担当者は、相撲を生で見ない人が多い。せっかく国技館まで足を運んでおきながら、支度部屋のテレビを見ているのだ。そのほうが解説を聞きながら観戦できるし、対戦成績や決まり手も表示されるし、映像がアップになったりスロー再生されたりもする。記者にとっては何かと便利なのだろうが、そのせいで、どこもかしこも同じような報道内容になってしまっている気がしてならない。
やはり相撲記者は実際に館内に身を置いて、その目で相撲を見、その耳で歓声や怒号を聞くべきだ。そうやって初めて「生の迫力」というものを茶の間に伝えられるのではないだろうか。杉山氏が毎日観戦に来ているのは、そして、そんな杉山氏の書く文章が面白いのは、まさに現場の臨場感を知っているからだろう。
(2006/10/01)
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