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間もなく春場所が始まる。朝青龍の力が抜きん出ている昨今、優勝の行方を云々する興味は薄い。もっとも関心を集めそうなのは、むしろ気鋭の若手、白鵬だろう。 白鵬は昨年夏場所に入幕して以後、5場所全てに勝ち越し。うち2場所で11勝、2場所で12勝をあげている。三賞も3回受賞。一気に関脇まで駆け上がり、次期大関の最有力候補に躍り出た。しかもまだ19歳。これからますます稽古を積み、体を作り、技を磨いていけば、まだまだ強くなる。春場所の9点枠は、間違いなく白鵬が一番人気に選ばれるだろう。 しかしながら私は、今場所の白鵬に危うさを感じている。宮城野部屋付きの熊ヶ谷親方が手放しで褒めないのがその理由だ。 白鵬の稽古は、その質と量ともに「緩み」が出てきた。かつては強い相手を求めて積極的に出稽古をしていたものが、最近はほとんど部屋での稽古しかやらないらしい。宮城野部屋は力士が10人しかいない小部屋。関取は、他に光法しかいない。部屋に閉じこもって若い衆(といってもほとんどが年上)に胸を出すのは気持ち良かろうが、白鵬自身の稽古相手としては、とうてい十分だとは思えない。 白鵬の「緩み」現象は他にもある。稽古を早めに切り上げることが多くなったという。夜更かしして寝坊してしまい、稽古場に現れないこともあったという。横審の稽古総見では北の湖理事が「もっとガンガンやってくれるものと期待していた」と、落胆のコメントを残した。白鵬の「緩み」は、もはや隠しようがないところまで来ている。 |
モンゴルの物価は、日本の約「7分の1」だという。三役に上がったうえ、勝つたびに懸賞金や金星、三賞といった臨時収入を稼ぎまくってきた白鵬にとって、今の収入は夢のような話だろう。 部屋に戻れば部屋頭としてタニマチの接待を受け、自分より年上の弟子たちをアゴで使う身分。ファンやマスコミにもちやほやされる。白鵬は若いだけに、そういった「甘い汁」の落とし穴にはまってしまったような気がする。 一方で、白鵬に煮え湯を飲まされたライバル力士たちは、汚名返上に心血を注いでいる。白鵬の取り口を研究し、死に物狂いで稽古し、万全の対策を立ててくることだろう。白鵬危うし!私ならそう考える。 私の予感がいつも当たるとは限らない。例えば朝青龍も、今の白鵬と同様の理由から、いつかかならず高くなった鼻をへし折られるだろうと思った。ところが朝青龍は、いつかシッペ返しを喰らうどころか、どんどん強くなっていく。今や敵なし、というのが現実だ。 白鵬は、そんな朝青龍の三役時より、さらに勢いがある。もしかすると大方の予想するように、このまま一気に大関へと駆け上がってしまうのかもしれない。だが、私はあえて警鐘を鳴らそう。いい話が全く聞こえてこない。耳に入ってくるのは悪い兆候ばかりだ。今場所の白鵬にはあまり期待しすぎないよう警告する。 (2005/03/01) |
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