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19.年寄名跡の代価
本相撲協会は105の年寄名跡(みょうせき)を認めている。だから親方が105人存在する。実際には大鵬、北の湖、貴乃花のように、現役時代の実績が抜きん出ている横綱が「一代年寄」を襲名しているが、本人が定年を迎えれば消滅。代々継承される名跡ではない。
寄名跡は誰でも継承できるものではない。現役を引退して親方になるためには、少なくとも次の3条件を満たさなければならない。すなわち.....
 条件1、幕内通算20場所以上務めていること
       または三役を1場所以上か十両以上で30場所以上務めていること
 条件2、名跡の保有者(先代)が継承を認めていること
 条件3、名跡を取得するための蓄え(資金力)があること
つまり関取としてある一定以上の実績を残し、名跡を譲ってくれる親方を見つけ、なおかつそれ相応のお金を払わなければ親方になれないのだ。このため現役時代に大活躍した人気力士でも親方になれなかったり、幕内に上がった経験が皆無でも親方になる例がある。
挿絵と文章は関係ありません
日、この年寄名跡の継承を巡ってある裁判が結審した。原告は先代の立浪親方(もと関脇・羽黒山)、被告は現在の立浪親方(もと小結・旭豊)。羽黒山は、愛娘と結婚した旭豊にほぼ無償で立浪の名跡を譲った。ところが二人はやがて離婚。それを理由に羽黒山は旭豊に名跡の代金を請求した。
一審の東京地裁は羽黒山の勝訴。旭豊は全額の支払いを命じられた。それを不服として今度は旭豊が控訴し、東京高裁で逆転勝訴。さらに羽黒山も上告して応戦したが、最高裁が請求を棄却したため敗訴が確定した。つまり旭豊は羽黒山に金を払わなくとも良くなった。
ちなみにこの時の東京地裁の判決により、現在の名跡取得にかかる費用が判った。旭豊に課せられた額は実に1億7500万円!若貴全盛のバブル期には2億とも3億とも言われたが、今なお名跡の相場は決して安くはない。俗に年寄名跡のことを「親方株」と言うのは、その資産的価値によるものだ。
つて年寄名跡は師匠から弟子に、たいていは一番の出世頭に、無償で譲渡された。その代り名跡を継承した者は、先代とその家族を部屋に(あるいは離れに)住まわせて一生面倒を見てやったものである。たとえ先代が亡くなっても、その娘を嫁がせ、妻(おかみさん)の最期をみとってやるのが一般的だった。変な言い方になってしまうが、先代とおかみさんが亡くなって初めて、弟子は師匠の呪縛から解放されたのだ。
現在のように、名跡の譲渡に金銭のやり取りが伴なうようになると、そういうしがらみもいっさい無くなる。大金を払う代償として、弟子は師匠という「目の上のタンコブ」を取り除き、自由を手にする。合理的といえば合理的、味気ないといえば味気ない時代になったものだ。
(2004/09/01)
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