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07.行司はつらいよ
司の定員は45人。力士は実力があれば出世できるが、行司は必ずしもそうではない。基本的には年功序列で、上が空かなければ(誰かが辞めなければ)先に進めない。行司の定年は65歳で、十両格に出世するまで15年ぐらいかかる。取り組みを正確に裁かなければ出世に響く。即ち、年間で規定回数以上の差し違えをすると、降格させられる。この規定回数は、幕下格以下が1年に12回、十両格以上は1年に6回となっている。
も位が高いのは立行司(たてぎょうじ)で、通常は2人いる。木村 庄之助(きむら しょうのすけ)が上格。次いで式守 伊之助(しきもり いのすけ)。他に、上から三役格、幕内格、十両格…と全部で8つの階級に分けられる。
上下関係に厳しいのは行司の世界も同様で、格によって給料その他の待遇が違う。服装もはっきりと異なり、幕下格以下の者はハカマのスソを上げて裸足で土俵に上がる。十両格になってようやくタビを履くことが許され、三役格以上は草履になる。結びの一番を裁く立行司のみ紫色の着物を着ることができる。腰に短刀を差している点も、立行司とその他の行司で異なる点だ。立行司の短刀は「差し違えたら(判定を誤ったら)切腹して果てる」という覚悟を表している。もちろん実際に切腹することはないが。
挿絵と文章は関係ありません
レビ中継は、行司にとって迷惑なシロモノだろう。微妙な勝負には物言いがつけられ、最終的にはビデオで判断されるのだからたまったものじゃない。審判長の耳にはイヤホンが差してあって、モニター室にいる審判員から連絡が入る。モニター室では、勝負の瞬間を様々な角度からスローモーションで見ることができる。たった一人の行司がいかに目を凝らそうと、スロービデオに勝てるわけがない。行司にとっては受難の時代。正確に裁いて「あたりまえ」で、正確に裁き続けても出世できるとは限らない。一方、差し違えが多発すれば直ちに降格。そういう意味では、力士よりシビアな階級社会である。
代の木村庄之助は実に緻密な軍配さばきをする名行司だった。いつだったか、貴乃花と曙がもつれながら転落。その小柄な立行司は、二人の大男が組み合ったまま土俵下へ倒れていくのを、俵の反対側から見つめていた。どちらの体が先に着いたか見えるわけがない。それでも庄之助は迷うことなく貴乃花に軍配を上げた。物言いがついたが、審議の結果、「軍配どおり」という結論だった。アナウンサーは、あの位置にいる庄之助がなぜ正確に勝負を見極められたのか不思議がっていた。
察するに庄之助は、両者の動きや流れの中から、見えない部分をも正確に想像できたのではないだろうか。言ってみれば「心眼」という境地だ。土俵の勝負とは別に、行司の「名人芸」を目の当たりにできた瞬間も、それなりの醍醐味が味わえる。
(2003/09/01)
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